電気の海に長く浸かりすぎたせいで、私たちのボディはまるで温かい湯船に長時間浸かった中学生のようになっていた。 ぐったりと力が抜け、まるで煮込まれたようにへなへなと弛緩してしまった。 もはや自力ではどうにもならないほど、自由意志は素粒子レベルまで縮こまり、役に立たない状態に陥っていた。物理的な力だけでは、この液体、この水中から脱出するのは極めて困難に思えた。 すると、まるで私の思考を読み取ったかのように――いや、これは確信できる――誰かが私の考えをはっきりと覗き見た。 私はそのことを明確に認識した。 「……誰?」 思わず声が漏れる。 迅璃もまた、私と同じ驚愕の表情を浮かべ、似たような声を上げた。 「どこ?」 一体、誰が私たちの思考を読み取ったのか。 周囲を慌ただしく見回したが、その相手は一向に姿を現さない。 電気の海の外ではないことは明らかだった。そこにはただ、コントロールタワーの巨大なシルエットと、魚の骨のようなアンテナが織りなす電波の布がそよ風のように揺れる光景しか見えなかった。 では、一体どこだと、祈るような気持ちでその存在を探そうと、ボディに搭載されたレーダーとライダーを全範囲で駆使したが、なかなか見つからない。 すると、ついにその存在が私と迅璃の前に姿を現した。 それは、まるで静かな闇から慎重に現れるように、ゆっくりと、誰にも気づかれないようにこっそりと、しかしそんな消極的な態度は自分の体裁に合わないとでも思っているかのような、気取った雰囲気を漂わせながら現れた。 電子の水面から姿を現したのだ。 それは、タコだった。 途方もなく巨大なタコ。 365階建てのコントロールタワーの半分ほどの大きさ――普通のビルなら半分でも驚異的なサイズだが、それがタコとなれば、認めざるを得ないほどの圧倒的な存在感だった。 ピリピリとした電気の海を切り裂き、雷のような轟音を太平洋のように広大な電気の海全体に響かせながら、丸く、地球の楕円形を思わせる頭部を突如突き出した。 その衝撃で、私と迅璃はサーファーが一生に一度は乗りたいと願うような、巨大な波に飲み込まれた。 その頭部が徐々に隆起し、中央に隠されていた一直線の目――閉じられた目が、ゆっくりとその姿を現そうとしていた。 「発電所のクラーケンだよ!」 迅璃が私にそう教えてくれた。 おそらく、彼女が最初からその存在を知っていたわけではない。太刀魚たち――私たちをここまで導いてくれたような太刀魚たちから聞いた知識だろう。 いつの間にか、私と迅璃に好奇心を寄せてくれていた海の生物たちは、まるで蒸発したか、放電したかのように一斉に姿を消していた。原因は容易に想像できた。 このエレクトリック・クラーケンのせいだ。 好奇心よりも強い生存欲――死にたくないという本能が、彼らを一瞬で消し去ったのだ。このクラーケンの餌、つまりその生存の道具にならないために、彼らは自分たちの生存を優先した。 私はこのエレクトリック・クラーケンの存在そのものよりも、こんな最先端の生物たちに、原始的なタンパク質的本能に感心してしまった。 だが、クラーケンの登場はまだ終わっていなかった。あまりにも巨大なため、その動きや存在の現れ方には時間がかかるのかもしれない。 大きいほど、時間がかかる。 私はまた一つ、どうでもいいことを学んだ。 クラーケンは徐々にその姿を現し、閉じていた一直線の目がゆっくりと開く。 その目はただ一つ、隻眼だった。 閉じている間は気づかなかったが、開かれた瞬間、頭部の95%を占めるほどの途方もない大きさで、完璧な円形を描いていた。 あまりの丸さに、恐怖すら感じるほどだった。 その目と視線が交錯した瞬間、CPUが3秒間フリーズする。 永遠に停止してしまうのではないか――そう確信しかけたその刹那、愛おしい迅璃の声が凍りついた神経を解きほぐすように響いた。 まるでドライヤーで無理やり氷を溶かすような、効率的ではないが心のこもった方法で、私の意識を引き戻してくれた。 「大丈夫?」 迅璃の優しい声が耳を撫で、たちまち完全に我に返る。 私は彼女に応えるように答えた。 「大丈夫。ありがとう」 再び恐怖に立ち向かい、クラーケンの目を正面から見据える。 その巨大な目は、原色的なピンクの血管が浮き上がり、充血しているように見えた。苛立ち、憤怒、あるいは何かに対する深い敵意――その目には、生産されて以来、これほど怒りに満ちた存在を見たことがないと確信できるほどの激情が宿っていた。 「怖いね」 私の口から出た言葉は、意外にも淡々とした口調だった。 この場の雰囲気に合わせて、敢えてそう言ってみただけのような軽さがあった。 その軽さに反応したのか、クラーケンはさらに怒りを増したようだった。 無視されたと感じたのか、原始的な生物らしい単純な反応を見せる。 エレクトリック・クラーケンは水面下に隠していた八本の足を一斉に現し、肉厚で、焼けば美味しそうなその柔らかくうねる足を振り乱した。すると、電気の海の水面が激しく揺れ、まるで地ならしのような波が巻き起こる。もし私たちが船に乗っていたなら、どんなに高性能な船でも転覆していただろうほどの猛烈なうねりだった。 その太い足の一本が、鞭のように鋭く振り下ろされ、私と迅璃めがけて襲いかかる。 私たちは互いに離れるように身をかわし、紙一重でそれを回避したが、すぐさま滝のような水流に巻き込まれ、電気の海の奥深くへ吸い込まれていった。 「迅璃!」 彼女の姿が見えなくなり、慌てて探す。 水中ではスピーカーからの肉声は届かない。 私は超音波や電波を駆使してテレパシーを送ってみる。すると、同じ波長で迅璃の応答が返ってきた。 「燏君!どこ?!」 「ここだ!」 手を伸ばすと、迅璃の優れた反応速度が私の手を瞬時に捉え、強く握りしめてくれる。 電気の海の中で感じる彼女の手の感触、その電圧は格別だった。 私たちは、まるで人間が水中で息を止めるように、無限に押し寄せる電子の奔流を必死に押しとどめ、唇を重ねた。 電気の海の中で、キスをする。 唇を重ねたまま時間が経つと、まるで水中メガネをかけたかのように、視界が徐々にクリアになっていく。 そして、エレクトリック・クラーケンの全貌がはっきりと見えた。 その足の吸盤は、すべてが目玉だった。 だが、それは人間の目ではなく、爬虫類の目――具体的には山椒魚の目に酷似していた。 記憶の断片から引き出したデータでしか判断できないが、その吸盤の目は紛れもなく山椒魚のものとそっくりで、異様にグロテスクな動きを見せていた。まるで地球儀のように、宇宙全体を貪るように見つめる、執着に満ちた気味の悪い目玉たちだった。 「行かせないわ」 声が響く。 それは電気の海全体に響き渡る、深く妖艶で、どこかしとやかな女性の声だった。 もう一度、その声が響いた。 「生かせないわ」