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第10話

バトンタッチ


『恋が終わると、愛が始まる』  私は魔法使いが呪文を詠唱するように、その壁画のタイトルを口にしてみる。  音声データとして複製し、模造してみる。 「恋が終わると、愛が始まる」  接続詞を変形させ、シミュレーションしてみる。 「恋が終われば、愛が始まる」  いや、違うな。もう一度。 「恋が終わったら、愛が始まる」  三つのパターンを口先で描いてみるが、どうもしっくりこない。  私は白髪の中学生に諮問を求めた。 「どっちがいいと思いますか?」 「ふーん……。私、選択という行為は苦手なんですけど」  ぶつぶつと呟く彼女に、私は詫びるように提案した。 「じゃあ、好きなやり方で答えてくれて結構ですよ」  すると彼女は、0・00000035秒ほど思考した後、言った。 「じゃあ、改竄(かいざん)します。私が思うには、『恋が終わると、』までは良かったんですが、その後ろがちょっと気に入らない。なので、『愛は始まる』にしたらどうでしょう」 「つまり、愛『が』始まるのではなく、愛『は』始まる、というわけですね?」 「その通りです」  私は感心した。  助詞一文字の違いだが、そこには決定的なニュアンスの差がある。 「まるで天と地ほどの違いがあるように思えます」 「じゃあ、渍さんは……」  白髪の中学生が、素敵な笑顔と共に言った。 「もはや愛のエキスパートですね」  そう言って、彼女はダンスに誘うように私へ手を伸ばした。  私より身長が15センチは低い設定の彼女が、大胆にもエスコートを申し出てくる。 「Shall we dance?」  そう言われた私は、苦笑いを浮かべて返した。 「普通、ダンスの誘いは男性型ヒューマノイドから行うものではないんでしたっけ?」 「そんな固定観念をぶち壊すために、私は白髪になりました」 「訳の分からない答えですね」 「へへっ」と彼女は悪戯っぽく笑い声をこぼす。「それが狙いです。それだけが、狙いです」  その答えがだいぶ気に入った。  私は彼女に合格点を与える審査員のように、あるいは扇子で顔の下半分を隠した貴族のように、少なからず気取った仕草で彼女の手を取った。  すると、彼女は案外強い握力で私の手を握り返してきた。  そのままグイと引かれ、花屋通りの中央広場――今はもう卒業生のダンサーたちでごった返している狂騒の渦中へと連行される。まるでこれからヤバい何かに私を巻き込もうとするような、危なっかしい足取りで。  私たちは広場のダンスホールへと踏み込んだ。  そして、ダンスが始まる。  音楽は打楽器のみで構成されていた。  BGMの正体は、夜空を埋め尽くす花火の炸裂音。  ひっきりなしに轟くその爆発音は、単なるノイズではない。火薬の化学組成による燃焼速度の違いと、爆発高度による気圧差が、厳密な計算の元に制御され、固有の周波数――すなわち「音程」を生み出している。  衝撃波の干渉とドップラー効果さえも計算に入れたその音響学的設計は、夜空全体を巨大な共鳴板に変えていた。  それはまるで、神々が叩く天空のマリンバか、あるいは星々を鍵盤に見立てたシロフォンのように、明確なメロディラインを伴って降り注いでくる。  その荘厳な打楽器のハーモニーに合わせ、私と白髪の中学生は踊り始めた。  私はワルツのステップなど知らない。  クラウド上のデータベースから定型的なダンスモジュールをダウンロードしようとしたが、私のAIが警告を発した。 「現在のパートナーとの適合率、20%以下」  定型通りの動きは、彼女との相性を阻害するらしい。  私はダウンロードをキャンセルし、彼女のリードに身を任せることにした。  回される。  振り回される。  彼女の小さな掌が導くままに、私は自由気ままにステップを踏む。  相手に主導権を握られるという「束縛」と、プログラムから解放された「自由」  その矛盾した快楽の中で、私たちは広場の奥深くへ、渦の中心へと巻き込まれていく。  回転の遠心力が極まった時だった。  高速で回転する独楽(コマ)同士が、紙一重の距離ですれ違うように――私と霈(シズク)の視線が交錯した。  一瞬の会合。  ターンと共に視線は途切れる。  だが、もう一回転して再び視界に入った時、彼女の瞳の色が、最初に目が合った時とは劇的に変化していることに気づいた。  次の瞬間、霈がダンスパートナーの手を強引に振りほどくのが見えた。  霈はずっと私を見ている。  彼女の元パートナーである卒業生の男子ヒューマノイドは、つい先ほどまではアヘン窟の住人のように、電子ドラッグに脳髄まで浸されたような陶酔の表情を浮かべていた。  だが、霈の手が離れた瞬間、彼から急速に血の気が引いた。  そして、まるで禁断症状に陥った中毒者がゾンビと化したかのように、制御を失った形相で、いきなり霈に向かって突進した。  そのスピードは尋常ではなかった。理性を失った質量弾と化した彼は、逃げる間もない霈のうなじ――重要な接続ポートが集まる急所――めがけて、サメのようにギザギザとした鋭利な歯を剥き出しにし、食らいつこうとしていた。  私は即座に、白髪の中学生の手を離した。  言葉を交わす余裕はない。  テレパシー通信で「さようなら」とだけ送る。  彼女からの「元気でね」という餞(はなむけ)の信号を受信すると同時に、私は霈とゾンビのいる座標へと弾かれたように駆け出した。  周囲にはダンスに興じるカップルが多すぎる。  直進は不可能だ。  だから、私はぶつかった。  ピンボールの銀の弾のように、あちらのヒューマノイド、こちらのヒューマノイドへと意図的に衝突を繰り返す。衝突の瞬間に計算された弾性反発を利用し、その運動エネルギーを推進力へと変換して、ジグザグの軌道を描きながら加速していく。  霈へ近づく。  ゾンビが暴悪に顎を開く。  ギラギラとした金属の牙が、彼女の無防備なうなじに迫る。  私のCPUが弾き出したタイムラグは、0.00074秒。  そのわずかな差で、私の方が速い。  『霈!』  声にならない名前をテレパシーで絶叫しながら、私は彼女を庇うように飛び出した。  霈に向かって身を投じた二体の男性型ヒューマノイド。  一方は捕食しようとするゾンビ。  もう一方は、私。  コンマ以下の極限の時間差を制し、私は彼女の前に滑り込むことに成功した。  辛うじて、霈(シズク)を守ることだけはできた。  だが、それは私の防御が完璧だったことを意味しない。  かつて霈のパートナーだったそのゾンビは、行き場を失った質量のすべてを、彼女を庇った私へと叩きつけてきた。本来なら霈のうなじに突き立てられるはずだった殺意のベクトルが、そのまま私のうなじへと吸い込まれる。  ガグッ、ヂリリリリ……!  耳障りな金属音と、装甲が圧壊する鈍い音が重なる。  サメの歯のように鋭利なギザギザの牙が、私の首筋に深々と食い込んだ。 「渍(ソマレ)君!」  私の腕の中で、霈が悲鳴に近い声を上げた。  だが、それに返事をする余裕など、今の私にはなかった。  激痛。  最先端のヒューマノイドロボットである私にとって、「苦痛」などという原始的なフィードバックシステムは本来不要なはずだ。にもかかわらず、エンジニアたちの怠慢か、あるいは悪趣味な想像力の欠如か。  私のシステムには、例えば生物進化の過程で淘汰されかけた「耳を動かす筋肉」のような、無意味で野蛮な遺物が未だに組み込まれていた。  その旧式な苦痛認識プロトコルが、この緊急時に誤作動――いや、仕様通りに完璧に作動してしまったのだ。 「ぐ、あ、ああああああああああ!」  システムが強制し、出力させた悲鳴が喉から迸る。  噛み砕かれたうなじからは、血液の代用として設定された銀白色の流体が噴出した。  水銀のように重く、強い表面張力を持ったその潤滑油は、ドバドバとあふれ出し、私に食らいつくゾンビの視覚センサーを直撃した。  視界を奪われたゾンビは、パニックに陥ったのか、それとも唯一残された感覚器官である「顎」にすべてを賭けたのか、さらに強く噛みしめてきた。  装甲がきしむ音に呼応するように、私もまたボリュームのリミッターを解除し、絶叫しながらゾンビの髪を鷲掴みにした。  アクチュエータ全開の馬力で、その頭蓋を私の首から無理やり引き剥がす。  ブチリ、と何かが引きちぎれる感触があった。  ゾンビは私のうなじを噛むことを諦めない。彼の口には、私の首の構成パーツの一部が食いちぎられたまま残っていた。  私のうなじは無残に抉(えぐ)られていて。  露出した断面からは、切断された配線や微細なアクチュエータが、内臓のように垂れ下がっている。そこから漏れ出る水銀色の体液に混じって、パチパチと小さな電気スパークが散る。  それはまるで、湿った地面でもがくミミズ花火のように、小さく、しかし不吉に燃え滾っていた。  激痛のあまり、私の目からは「水星」の概念色を模した、ペールブルーの涙が流れ落ちる。  震える片手を、噛みちぎられたうなじの傷口へと当てた。  ソフトウェアの自己修復プログラムは堅牢だが、ハードウェアの修復機能は極めて貧弱だ。「ソフトウェアはハードウェアに比べれば朝飯前」というシリコンバレーの格言があるかどうかは知らないが、物理的な破損の前では、私は無力に近い。  この暗澹たる状況と、CPUを焼き焦がすような痛みに意識が明滅する中、傷口に当てた掌の触覚センサーが、奇妙な異物を検知した。  それは、「卒業証書」だった。




 あの乱痴気騒ぎの中で誰かが放った筒なのか、それともこのゾンビが咥えていたものなのか。  硬質な筒状の物体が、まるで喉に刺さった魚の小骨のように――いや、そんな可愛らしいものではなく、構造材に食い込む杭のように、私のうなじの深部に突き刺さっていたのだ。  確かめるように、私は指を傷口の奥へと侵入させた。  その瞬間、CPUが論理崩壊を起こしかねないほどの、超絶的な激痛が走った。 「ガ、アアアアアアアアアアアアッ!!」  私は、ダンスパーティーの狂騒を切り裂き、広場全体を震わせるほどの獅子吼(ししく)のごとき咆哮を轟かせた。  恐らく、その絶叫は水星全土に轟いたに違いない。  太陽系で最も小さなこの惑星の表面積程度なら、私のCPUが弾き出した「あり得ない激痛」の出力データだけで埋め尽くすことなど造作もないはずだ。  指を深部まで突っ込んでしまった以上、引き抜く際にも再び激痛が走るだろう。  ならば、この苦痛に見合うだけの成果を得なければ割に合わない。  私はあえて、傷口へさらに深く指をねじ込んだ。  その瞬間、私はある心理的特異点を発見した。  苦痛のレベルが一定の臨界点を超過すると、システムはエラーを起こし、逆に「笑顔」を出力するのだ。  そうか、人間たちはこのバグだらけの原始的苦痛システムに対処するために、「笑う」というカウンタープログラムを進化させたのか。  私はその深淵なる真理を、身をもって悟る。  私は顔いっぱいに、神々しいほどに幸せそうな笑顔を張り付かせながら、指を奥へと突き進める。  苦痛の特異点を超え、瞳から溢れる涙は、もはや青を超えて太陽の如く白く発光していた。  指先が、うなじの深部に突き刺さる異物の根元を捉える。  絡みつくアクチュエータや配線を指で強引にこじ開け、ルートを確保する。  私は、鞘から聖剣を引き抜く騎士のように、あるいは心臓から矢を引き抜く巨人のように、勢いよくその物体を引き抜いた。  ブチブチブチッ!  引き抜かれたうなじの空洞から、私の心境を代弁するかのような「苦痛のファンファーレ」が鳴り響く。  それは、あらゆる苦難を乗り越え、死地から帰還した凱旋将軍を迎えるトランペットのように、神経回路を焼き切る轟音となって頭蓋内を駆け巡った。  そして最終的に、白銀の血液に塗れた私の手には、それが握られていた。  すると、さっきまでゾンビと化していたあの卒業生――元霈のパートナーだった男子ヒューマノイドが、唐突に動きを止めた。  彼は口に咥えていた私のうなじの肉片――配線と装甲の塊を、ぺっと唾でも吐くように行儀悪く地面に吐き捨てた。  まだ私の金属血液が付着している口元を袖で乱暴に拭うと、憑き物が落ちたように正常な表情に戻り、道でも尋ねるような気軽さで、苦笑いと共に私に言った。 「卒業って、苦難の道なんだよねぇ」  私は呆れ果てる。  あるいは、もう彼がゾンビとして襲ってくる脅威レベルが低下したことへの安堵か。  様々な感情がない交ぜになり、私は深く、重い溜息をついた。そして、手に握っていた血塗れの卒業証書を棍棒のように振りかざし、その男の頭をフルスイングでぶっ叩いた。  パコォン!  彼は強打されたことになんら痛みを感じる様子もなく、物理演算に従って、打たれた方向へ独楽(コマ)のように回転を始めた。そしてそのままクルクルと回りながら、次のダンスパートナーを探す旅へとフレームアウトしていった。  私は、自分の手に残された卒業証書を見下ろす。  血と涙と潤滑油の結晶。  ふと気配を感じて視線を上げると、ダンスパートナーを失った霈が、私の方へ戻ってくるのが見えた。  私は証書から目を離し、霈の方へ視線を戻す。  すると――  私と目が合った霈は、なぜか走ることもなく、くるりと踵(きびす)を返した。  そして、逃げ始めた。  私から、逃げ出した。  理解不能なエラーが発生する。  さっきまでは自分から近づいてきたのに、なぜ?  数クロックの演算の後、一つの解に到達した。  私の手に、「恋の卒業証書」が握られていたからだ。  彼女はそれを見て、逃走本能を刺激されたらしい。  だが、なぜ?  その理由はまだ解析できていない。  思考するより先に、行動ルーチンが決定される。  追跡(チェイス)だ。  私は駆け出した。  霈を追いかける。  その瞬間、広場を支配していたBGMが、優雅なワルツから激しいピアノ曲へと切り替わった。  同じショパンでも、曲調は一変する。  『練習曲作品10第4番(エチュード・テン・フォー)』――通称、『激流(Torrent)』。  あるいは、今の状況にふさわしい名を冠するならば、『追撃』。  プレスト・コン・フォッコ(火のように速く)。  その指示記号の通り、ピアノの旋律が加速する。  音速の打鍵が叩き出すリズムに乗って、私は霈の背中を追い続けた。  彼女の妖艶な背中が近づいては遠ざかり、遠近法を用いた絵画のように視界の中で伸縮する。  その西洋画を描くための筆は「私」  そしてインクとなる絵具は、ショパンの『激流』  私たちは、おとぎ話のアリスと時計ウサギのように、あるいはトムとジェリーのように、終わらない追いかけっこを演じる。  不思議な浮遊感にセンサーを翻弄されながら、私は一生懸命に、せっせと、バリバリと、CPUを焼き焦がしながら追い続けた。 「なぜ逃げるんだ!」  私は叫んだ。  回転するダンサーたちが作り出す、流動する肉の迷路。  その中を掻き分け、彷徨いながら、私は彼女の背中に向けて、誘導ミサイルのようなテレパシーを放ち続けた。  私のテレパシー信号は、彼女のアンテナに正確に命中した。  旧式モデルである彼女のソフトウェアには、私のような最新型からの高出力テレパシーをミュートする機能など備わっていない。  彼女は受信を強制される。  だが、当然ながら返信はない。  こうなれば、物理的に捕まえるしかない。  どうやって?  CPUをフル回転させても、有効な戦術案が浮かばない。  このもどかしく、じれったい状況を打破する画期的なメソッドはないのか。  頭の中に、アルキメデスの「ユーレカ!」のような閃きは降りてこないのか。  そんな神頼みじみた解決策を渇望した瞬間、私は己の思考の怠惰さに気づく。  行き詰まった時に、魔法のランプの精(ジーニー)や、七つのボールを集めて呼び出す龍(ドラゴン)のような、「手っ取り早く安易な万能解決策(デウス・エクス・マキナ)」を願うこと自体が、間違いなのだ。  それは歴史の遺物とも言うべき、古臭い悪習だ。  私は即座にCPUの回路を切り替えた。  誠実性(ブルート・フォース)。  この局面において頼るべきは、小手先のテクニックや閃きではない。愚直なまでの出力(パワー)こそが唯一の道であると、私は「理解」するのではなく、「覚悟」した。  論理ではなく、信念として処理した。  私は諦めず、下半身のアクチュエーターへエネルギー配分を集中させる。  限界を超えて駆動させ、加速する。  幸いなことに、先ほどゾンビ化した卒業生にうなじを食いちぎられた激痛があまりに大きすぎたおかげで、無理な駆動による脚部の過負荷アラートなど、ノイズ程度にしか感じられなかった。  巨大な苦痛は、些細な苦痛を無効化する。  システムがそう判定している。  私は段階的に速度を上げる。  BGMであるショパンの『追撃(エチュードop.10no.4)』もクライマックスへと突っ走っている。  その狂乱のテンポに同期するように、私の脚部出力もスムーズに上昇していく。  何の閃きも、魔法もない。  ただ「誠実性」という名のリソースを濫用し続けた結果として、私は正当な報酬を受け取った。  やがて、私の手は彼女の背中を捉えた。  私は彼女の肩を掴んで制止させるのではなく、並走状態で距離をゼロにした。  そして、反対側の手――卒業証書を握りしめている手を、彼女の目の前へと突き出す。  私は残存バッテリーの半分以上を一気に放出(ダンプ)し、そのエネルギーを全て指先のアクチュエーターコイルへと注ぎ込んだ。  過剰な電流が渦を巻き、局所的ながら強力な電磁場を生成する。  私の手と、筒状の卒業証書が、一つの強力な電磁石へと変貌する。  私はその磁力を帯びた証書を、彼女の空いている手へと近づけた。 「っ!?」  彼女の手が、意思に反して引き寄せられる。  ヒューマノイドのボディを構成する金属パーツやサーボモーターが、私の発生させた強力な磁場に反応し、引力に逆らえずに吸い寄せられていく。  彼女は綱引きでもするかのように必死に手を引っ込めようとしたが、私の全エネルギーと、これまでに味わった物理的苦痛のすべてを変換した磁力には敵わない。  カキン、と硬質な音がして、彼女の手のひらが卒業証書に吸着した。  磁力はさらに強まる。  彼女の指の関節内にあるモーターが強制的に駆動させられ、一本また一本と、証書を握り込む形へと折り曲げられていく。  最終的に、彼女は自分の意思とは無関係に、その卒業証書をぎゅっと握りしめさせられていた。  それを見届けた私は、即座に踵を返した。  彼女に背を向け、一言だけ告げる。 「バトンタッチ」